直前に葬式の時の騒動を書いたが、それで思い出した事がある。
こちらの田舎では、葬式の時に町内にふれ回る役がある。
ほとんど自宅で葬式が行われるのだが、出棺の時刻が近づくと鐘や太鼓を打ち鳴らしてふれ回るのだ。
鐘とか太鼓など何の音を出すのかは、宗派によって異なるようだが声を出す事はない。
ふれ役は一人で、町内を一周して来る。
この、ふれ役をなるべく若者にはさせない暗黙の決まりがある。
やはり、このような役はねぇ・・・
僕は詳しくないのだが、火葬場から家に戻って墓地まで歩く時になる事もある。
ともかく、ふれが出ると道筋の人々が出てきて死者を送るのである。
この際に施主からお礼として、小分けした菓子などを手渡す役もある。
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葬式の手伝いは、隣組という小さな単位で各戸で二人ずつ出る。
もしも独居の場合ならば、遠くの子を呼び寄せたりする事もあるほど面倒だ。
今の時代に、なんとも古いやり方である。
そして葬式だけではなく、初七日、四十九日、新盆など一年がかりで手伝う。
僕はこのやり方が嫌いで、いつも不満たらたらであった。
隣組の戸数はマチマチだが、だいたい6~8軒くらいの構成かと思う。
各戸で二人ずつなので、総勢で十数人が集まる事になる。
たいがい男女の二人で出て、女は食事の準備などをする事になる。
通夜の日の昼頃から、男らが家の中を片付けたり葬式の相談をする。
役所の届出、お寺への連絡、棺桶や祭壇の調達、火葬場の手配、墓所の掃除とかいろいろ。
それと、親戚や親しかった人への連絡もある。
これらは、葬式をする家の者が一切係わらないで済ませる決まりだ。
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通夜と葬式の当日は、受付の役がけっこう大変であり、また退屈でもある。
香典の中身をそっと確かめたり、挨拶の頭の上げ下げが多くて肩こりになってしまう。
かといって他の役もそれなりに大変であるが・・・
最低でも二日掛かりの手伝いになるので、勤め人にはけっこうな負担になる。
僕はその地を離れて久しいが、そのやり方は今でも続いているのだろうか。
たぶん、葬儀屋任せだけという事はしていないと思うが・・・
古い人間が生きている限り、なかなか変えられないだろう。
中島みゆきの「世情」が、なんとなく頭の中で流れ始めてきた。