常識はずれで喋り好きな
「あきれた人」も、自分だけの事で済むなら良いのだが。
あまりにも迷惑なので、とうとう顧客を減らしてしまったという。
この「あきれた人」は朝夕に、新聞と牛乳の配達をしていた。
時に配達先で喋りこんで、配達に遅れが出ていたとか。
やはり、このような物は定刻に配達されないと困るはずだ。
当時は配達と月末の集金を同じ人がしていて、「あきれた人」もそうしていた。
朝夕の配達時は配達先の家人と顔を合わせる事は少ないが、集金は必ず顔を合わせる。
すると、いつもの喋りを発揮して・・・
さすがに配達先はいつもの優しい近所の人とは違い、そっけなく追い払う。
それでも自分の常識はずれの喋り過ぎに気づかず、何にも感じなかったのだろう。
やがて顧客らは、あれが配達や集金にくると、いつまでも喋っていてこちらの仕事にならない。
いっそ、他の販売店から買う事にした人が相次いで・・・
とうとう、ほとんどの顧客を失ったそうだ。
これは、販売店には大損害である。
いつしか自分で辞めたのか、辞めさせられたのか・・・
朝夕の配達仕事をしなくなっていた。
仕事が無くなれば、ますます貧乏になり・・・
そして手に職がある訳でもなく、暇ばかりが増える。
すると、近所の家に行く事が多くなりという悪循環が始まる。
近所の家では、次第に玄関にカギを掛けるようになった。
声がしても「あきれた人」だと分かると、扉を開けなくなった。
しかし、商店の家は戸締めをする訳にもいかず、困った事だろう。