土曜日曜や特売日のスーパーは込み合うので、なるべく避けている。
それでも足りない物があると、仕方なくスーパーへ出向く。
すると、けっこうな頻度で販促の試食に出くわす。
今の時期なら焼き肉のタレや、肉そのものとか。
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少し前の事であるが、その日は焼き肉のタレが試食になっていた。
その前を通り過ぎようとした時に、しつこく勧められて困った。
僕は焼き肉という、あの何でも朝鮮の味にしてしまうタレが大嫌いなのである。
そもそも僕は肉を塩コショウ、あるいはニンニク醤油などで食べている。
焼き肉のタレなんぞ、自分から買う事は滅多にないのだ。
いらないと行って、僕は立ち去りたかったのだが・・・
その近くの商品棚には、僕が買おうとしている品があったのだ。
だから立ち止まる事になってしまい、向こうには好都合。
僕は大迷惑という状況が出来上がってしまった。
「焼き肉は嫌いだから、いらないよ」
「あらぁ珍しい、そういう人がいるんですかぁ」
「味見だけでもどうぞ!」
僕の鼻先に、小さな紙皿に載せた焼き肉を近づけて来る。
「いりませんよ!」
「へぇ、変わった人・・・」
珍しくても変わっていても、いちいち教えて貰わなくても良いんだよ。
このような事を言い返すと、相手は仏頂面になっていた。
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そう言えば、去年末にも似たような事があった。
正月おせち料理の「きんとん」を探していた時の事だ。
たいがい、暮れのスーパーは既製品のおせち料理が一箇所に並べられている。
カマボコ、伊達巻、昆布巻き、黒まめ、きんとん・・・
ちょうど「栗きんとん」の販促をしていたようで、声をかけられた。
60歳近くの婆さんで、商品の栗きんとんを差し出して来た。
いらないと断ってもしつこいので、僕は栗が大嫌いだと言った。
それまでの作り笑いがウソのように消えて、大魔神のような顔つきに変わった。
その変わりようが可笑しくて、僕はニヤニヤしながら他のメーカーの「豆きんとん」を手にした。
僕は栗そのものは嫌いではないのだが、栗を加工した物はあまり好まない。
ケーキのモンブランなども、進んで食べる事はない。
しかし、あの仏頂面や大魔神のような怒った顔は面白かったなぁ。