また三つ月が経って、いつもの病院へ母を連れて行った。
前回から、ビタミンB12の注射をする事になった。
ようは、血液中の鉄分不足の兆候が見られたからである。
まだ深刻な状況ではないが、そろそろ対策をしておいた方が良いという事からだ。
近頃は、何かと弱気になっていた母だが。
病院で信頼できる医師の話を聞くと、ずっと元気になってくる。
子の気持ちが分からずにいるかと思うと、少し寂しい気もするのだが。
なに、それなら毎月でも病院通いでもしてやろうかとも思う。
何をどうしても、元気でいてくれるなら、それで良いのだ。
さて、今日の病院帰りには太巻き寿司を買った。
馴染みの製造者ではなかったが、見るからに田舎の巻き寿司で。
ちっとも洗練されていないが、それがまた母も僕も気に入った品であった。
さっそく食べると、思ったとおりの味わいである。
何かと甘過ぎる昨今の物とは違い、素朴な味がたいそう気に入った。
それでも僕にはまだ不満な味なのだが、他と比べればずっと良いと思う。
昔は母が銅の玉子焼きで、四角い薄い玉子焼きを作り。
焼き海苔、かんぴょう、でんぶを使い、チューリップやカタツムリなどの模様になる巻き寿司を作っていた。
変に油臭くて薄い玉子焼きにくるまれて、ほどよい酢加減の巻き寿司が忘れられない。
僕は、もう一度あの玉子の巻き寿司を食べてみたいと思った。