ある時、職場で暴力沙汰の揉め事があった。
僕がいち早く気付いて、初めに手を出した男を抱え込んで止めた。
その男は若い奴で、上司に叱られているうちにキレてしまったようだ。
男は上司の首を掴んで投げ飛ばし、倒れた上司の首を締め付けていた・・・
僕は慌てて走り寄り、その男の首に腕を回して引き離そうとしていた。
そのうち騒ぎに気付いた他の者が駆けつけ、両者を分けておさまった。
なにしろ相手は190cm超の大男で、僕との身長差は20cmもある。
しかも、ガッシリとした小太りで力もある現場作業員で・・・
僕も力はあるが、荒れ狂った男をおとなしくさせるのは難しい事だ。
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男が落ち着いたところで、事務所に連れて行き事情を聴いた。
いろいろ叱っているうちに、上司も言葉が過ぎたようである。
しかし、なんと言っても暴力を振るってはならない。
業務中という事もあり、当日中に解雇が決まりすぐに退社させた。
その男は、普段から言動におかしなところがあった。
虚言が多くて、皆が話半分に聞いていたとか。
そして今回の騒動で危ない奴という事になり、解雇が妥当という事になった。
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翌日の朝。
僕は、いつもどおり出勤している男を見かけた。
昨日の話はどうしたのかと思い・・・
やはり、何事も分かっていなかったようである。
改めて解雇を言い渡されて、始業まもなく帰っていった。
ん~、なんだか怖い話である。